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妖怪

ろくろ首はどんな妖怪!?正体や油を舐める理由や有名な落語も紹介

皆さん、ろくろ首をご存じでしょうか。怪談などにたびたび登場する有名なお化けですが、実は首が長くなるタイプと首が抜けるタイプの2種類存在すること知っていますか。またろくろ首は行灯の油を夜、こっそり舐めることで有名だとか。今回はそんな意外と知らないろくろ首について紹介していきます。

ろくろ首の正体

ろくろ首とは日本の怪談に登場する夜になると首が長くなり、人を驚かしたり襲ったりする女性のお化けです。昼間は普通の女性の外見をしているので、夜になって首が伸びている様はギャップもあり恐ろしいですね。

ろくろ首のろくろの語源については様々な説があります。陶器を作る際に回すろくろと感触が似ているからという説や井戸のろくろ、傘のろくろから来ているといった説があります。

ろくろ首には2種類いる

そんなろくろ首ですが、実は2種類存在しているのです。首が胴体から離れて抜けて空を飛ぶタイプと首が長くなるタイプです。多くの方は首が長くなるタイプをご存じかと思いますが、実は首が抜けるタイプがろくろ首の原型ともいわれているのです。そんな2つのタイプのろくろ首について見てきましょう。

首が胴体から離れて抜けて空を飛ぶろくろ首

こちらの首が抜けて空を飛ぶタイプが一番最初に登場したろくろ首です。しかもこの首が抜けるタイプのろくろ首は夜間に人を襲い、血を吸うなどの人間に危害を加えるのです。この首が抜けるタイプは魂が肉体から抜けた(離魂病)ことを意味していると言われています。外見的な特徴として首に梵字が一文字書かれていて、夜は耳を翼にして飛ぶそうです。また夜に首が抜けて飛び回っているときは胴体を移動すると元に戻らなくなってしまう弱点もあるようです。

この首が抜けるタイプのろくろ首は中国の飛頭蛮(ひとうばん)という夜になると首が抜けて空中を飛び回る妖怪から来ていると言われています。飛頭蛮にも首回りに筋があることが外見的な特徴で、日本のろくろ首とにいています。日本と中国は古くから交流があったので、その中で中国の飛頭蛮が伝わり、日本のろくろ首が誕生したのかもしれません。

実は日本でろくろ首といえば最初はこの首が抜けて飛ぶタイプが主流だったのです。室町時代のことが描写されている「轆轤首悕念却報福話」にも登場するので、室町時代にはこの首が飛ぶタイプのろくろ首が誕生していたと推測されます。以後江戸時代の「曽呂利物語」、「百物語評判」、「太平百物語」にも首が飛ぶタイプのろくろ首の描写がありました。

首が長くなるろくろ首

夜になると首が長くなるタイプは江戸時代中期後期にようやく誕生します。この時期は世の中が平和で争いごともなかったので、庶民の間で怪談が大流行しました。そんな怪談ブームに乗じて、首が長くなるタイプのろくろ首が誕生しました。また浮世絵や版画の技術が発達してきたことも首が長くなるタイプのろくろ首の誕生を後押ししたかもしれません。絵を描くとなると首が宙を浮いている女性の絵は分かりにくく描きにくかったため、胴体と首を長い首でつないだという説もあります。

江戸時代には首が長いタイプのろくろ首は庶民文化の様々な場面で登場していました。例えば「画図百鬼夜行」や「甲子夜話」、「列国怪談聞書帖」といった有名な文学作品だけではなく、北斎漫画の「ろくろ首・三目の眼鏡」や歌舞伎「重扇寿松若」などにも登場していました。このように首が長くなるろくろ首は文学や絵画、歌舞伎にまで登場の幅を広げ、「ろくろ首 = 首が長くなる女性のお化け」というイメージを定着させました。

ろくろ首はなぜ油を舐める

そんなろくろ首ですが、行燈の油を舐めるという言い伝えがあります。先ほどの落語やほかの様々な文学にもろくろ首は行燈の油を舐めるという描写がり、イメージとして定着しました。これについてはなぜ舐めるのかについ打ては明確な理由を示した文献は見つかりませんでした。

行燈は電灯やライトなどなかった時代の夜に部屋を照らすものでした。ろくろ首は夜しか首を長くして本性を現すことができす部屋が明るいと不都合だったから、明るさの根源である行燈の油を舐めて吸っていたのかもしれません。

ろくろ首の落語

このようにろくろ首は様々な文学に登場しますが、一つろくろ首が登場する有名な落語があります。今回はその落語のあらすじを簡単に紹介していきます。

昔々、25歳になっても母親のもとを離れなれず二人暮らしをしている与太郎という男がいました。彼には兄がいて、兄には嫁がいて子供までいる幸せな家庭を築いていました。そんな兄の幸せそうな様子を見て嫉妬した与太郎は嫁が欲しいよ伯父さんに相談しました。

すると伯父さんから両親がなくなり莫大な財産を受け継き、器量もあって気立てもよい20歳の美しいお嬢さんが紹介できると言われました。さすがにそんな好条件に怪しさを感じた与太郎は「なぜ今まで養子が来なかったのか?」と聞きました。すると伯父さんは「そんなお嬢様にはただ一つ、人には言えないことがある。夜中に首が伸びはじめて行燈の油をなめる・・・」そう紹介できる20歳のお嬢さんはろくろ首だったのです。

財産が有って器量もあって美人であってもろくろ首であることに恐れを抱いた与太郎は「首が伸びるのは夜だけですか?」と質問。すると伯父さんは「その通り。しかも夜の真夜中のほんの少しの間だけ。お前は一度寝たら地震や火事や雷があっても朝まで起きないじゃないか。夜寝ている間に首が伸びたとしてもお前は絶対に気づかないよ。」

そう言われて納得した与太郎は伯父さんに紹介されお嬢さんに会いに行くことに。すると与太郎はお嬢さんをすっかり気に入ってしまい無事縁談がまとまりました。婚礼後、最初の夜に与太郎はいつもと布団が違うのでなかなか寝られませんでした。そうして寝ることができずに夜中の12時になると横で寝ているお嬢さんがコソコソ動く気配がしました。そう、お嬢さんの首が伸びて、行燈の油をなめ始めたのです。びっくりして飛び出した与太郎は伯父さんの家へと駆けこみました。

与太郎は「お嬢さんの首が本当に伸びたんだ!」と言いましたが叔父さんは「それを分かっていて結婚したんじゃないのか?」と返しました。与太郎は「それはそうだけど初日から首が伸びるなんて思わなかった。やっぱり家にいてお母さんと暮らす方が安心するから実家へ帰ろう。」と言いました。すると伯父さんは「お前のお母さんは今回の縁談に大喜びで、次は子作りが上手くいくといい、子供ができないかいい知らせが聞きたいと首を長くして待っているぞ。」それを聞いた与太郎は「お母さんも首を長くして待っているんじゃ、実家にも帰れない。。」

このようにろくろ首と分かっていながら結婚して首が伸びた様子を目の当たりにして実家へ帰ろうもお母さんも首を長くして待っているという落ちでした。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ろくろ首の正体と種類、有名な落語を紹介していきました。もともとは首が胴体から抜けて首が空を飛ぶ種類が主流でしたが、江戸時代中期後期の怪談ブームや絵画の流行で首が長い種類が主流になっていきました。ろくろ首という名前やイラストは見たことあるかもしれませんが、今回紹介したような意外な事実もありました。興味を持った方はぜひろくろ首が登場する文学を読んでみてください!

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