皆さん、雪女をご存じでしょうか?雪山の奥深くにいる白い肌が良く似合う美しい女性の姿をしていますが、登山客へ行きのように冷たい息を吹きかけて凍死させたり遭難させたりするとても恐ろしいお化けです。そんな雪女の正体は一体何なのでしょうか。また雪女の伝説は雪国ではなく青梅発という説もありますが、本当なのでしょうか?今回はそんな意外と知らない雪女について紹介していきます。
雪女の正体や特徴
日本の伝承に登場する雪女は雪山にいる透き通るような白い肌の持ち主である美しい女性の姿をしています。しかしその出自や物語に様々な正体が存在します。雪の精霊、または雪の中で命を落とした女性の霊として語られることもあれば、地方によってはさらに異なる背景を持つことが伝えられています。
特に山形県小国地方の説話は雪女を独特な視点で描いています。ここでは雪女は月世界の姫とされ、退屈な宮廷生活から脱出するために地上へと降り立ちました。しかし、彼女は再び月へと戻ることができなくなり、その結果として雪の降る月夜にのみ姿を現すようになったとされています。この物語は、彼女の存在の神秘性とともに、運命に翻弄される悲哀を感じさせます。
このように各地で雪女の正体や特徴は異なりますが、美しい白い肌を持つ女性という描写は共通しています。
雪女の由来
雪女は一体いつから存在していたのでしょうか?雪女の由来は少なくとも室町時代末期に遡ります。この時代の連歌師である宗祇法師によって記された『宗祇諸国物語』には、雪女の目撃談が含まれており、越後国(現在の新潟県)にて彼が直接雪女を見たとされています。
この物語における雪女の特徴は、常に死を連想させる白装束をまとい、男性に冷たい息を吹きかけて凍死させるか、精力を吸い取って命を奪うという点に共通しています。このため、彼女は広く「雪の妖怪」として恐れられてきました。
また、雪女の物語は後に小泉八雲の『怪談』の一篇「雪女」としても取り上げられ、その美しさと恐ろしさが強調され、雪の性質とリンクさせて描かれています。こうした表現は、雪女がもつ儚さや美しさを際立たせ、彼女の物語性を深める要素となっています。
一方で、「雪男」という名称が近代になってイエティやビッグフットと同様に用いられるようになりましたが、これは雪女の男性版ではなく、全く異なる背景を持つ名称です。
雪女の逸話やエピソード
日本の各地に様々な雪女にまつわる伝承があり、その物語は地域によって異なる特色を持っています。雪女の話は、美しくも恐ろしい性質を持ち合わせており、日本の文化に深く根付いています。
例えば新潟県小千谷地方では、雪女は美しい女性として現れ、男性と結婚するも、風呂に入れられると氷柱に変わって消えるという話が伝えられています。この話は「つらら女」として知られ、青森県や山形県でも似たような物語が「しがま女房」として語られています。
山形県上山地方では、雪女は老夫婦のもとを訪れ、囲炉裏の火で暖を取りながら一夜を過ごしますが、夜更けになると冷たさを増し、最終的には雪煙となって消え去ります。この物語は、雪女の儚さと冷たさを象徴的に表しています。
また、雪女は姑獲鳥のように子供を抱かせる話もあり、その子を抱く者は次第に重くなり、最終的には雪に埋もれてしまうという恐怖の伝説があります。この話は、人を助ける善意が逆に命取りになるという教訓を含んでいます。
長野県の伊那地方や愛媛県の吉田では、雪女は山姥のように現れ、特に子供を守るために注意が払われます。岩手県の遠野地方では、小正月や満月の夜に多くの子供を連れて遊ぶ姿が語られ、これもまた山姥の伝説と通じるものがあります。
雪女に関するこれらの物語は、雪の多い冬の季節に自然現象と人々の生活が密接に結びついていることを示しています。また、雪女の物語は、一種の異類婚姻譚としても語られることがあり、人間と非人間の間の恋愛や結婚を描いた物語は、日本だけでなく世界中の文化に見られる普遍的なテーマです。
雪女の伝説は東京の青梅が発祥!?あらすじを紹介
このように日本各地に様々な伝承を持つ雪女ですが、一番有名な伝説が小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が書いた『怪談(kwaidan)』です。なんと舞台は雪国ではなく東京都の青梅。一体どんな物語なのか見ていきましょう。
かつて武蔵の国、西多摩郡の静かな村に、茂作と巳之吉という二人の木こりが住んでいました。茂作は老練な木こりであり、巳之吉は若く見習いの身。ある冬の吹雪の夜、二人は山中で避難し、小屋で夜を過ごすことにしました。
夜中、巳之吉が目を覚ますと、そのそばには白い装束を纏った長い黒髪の美女が立っていました。彼女は恐ろしい目をしており、隣に寝ていた茂作に冷たい息を吹きかけると、茂作はその場で凍りつき死んでしまいます。次に巳之吉にもその冷たい息を吹きかけようとした女は、彼をじっと見つめ、突然微笑みを浮かべて彼に話しかけました。「お前はまだ若く美しいから助けてやる。だが、今夜のことを決して誰にも言ってはならない」と。
数年後、巳之吉は「お雪」と名乗る美しい女性に出逢い、やがて二人は恋に落ちて結婚しました。二人の間には十人もの子供が生まれましたが、お雪は一向に老いることがありませんでした。
ある夜、巳之吉が過去の出来事をお雪に打ち明けた瞬間、お雪は激しく動揺し、自らがかつての雪女であることを告白しました。彼女は巳之吉に警告し、もし子供たちを悲しませるようなことがあれば、自ら巳之吉の命を奪うと言い残し、白い霧となって消えてしまいました。
『怪談(kwaidan)』
この物語は、小泉八雲が東京の西大久保に住んでいた時、多摩郡調布村(現在の青梅市)出身の親子である宗八とお花から聞いた話が元になっています。調布橋の近くには物語の舞台となった渡し船や渡し守の小屋がかつて存在しており、現在その場所には雪女の石碑が建てられています。この地域は今も昔と変わらず、鬱蒼とした木々が生い茂り、暗くおぞましい雰囲気を保っています。物語に登場する雪女は、男性に息を吹きかけて凍死させるなど、冷酷で恐ろしい妖怪でありながら、その美しさで男性を惹きつける魅力も持つ複雑な存在です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?雪女について正体や特徴、青梅説の伝説について紹介してきました。日本各地で様々な雪女の逸話やエピソードがありますが、一番有名な伝説が東京の青梅の物語なことは意外ですね。
本サイトでは雪女以外にも様々な日本の面白い歴史や文化を紹介しています。もし興味ございましたら是非他の記事も読んでいただけると嬉しいです!
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