皆さん、日本の学歴社会についてどのように考えていますでしょうか。いい大学を出れば就職が有利になり、会社の中でも昇進に有利になる。そういった側面を併せ持つのが学歴社会です。しかし勉強ができるからといって仕事ができる能力があるとは限りません。しかも勉強をさせるにはお金がかかります。親の経済力がそのまま学歴に影響を与えてしまっているのも今の日本の学歴社会の問題です。今回はそんな日本の学歴社会を見ていきたいと思います。
学歴社会の歴史
日本における学歴社会の歴史は、その根底にある教育制度の発展と深く関連しています。江戸時代(1603-1868年)には、武士階級の間で読み書きや儒学が重視され、寺子屋と呼ばれる私設の初等教育機関が広く普及しました。これらの寺子屋では、一般民衆も含めて多くの子どもたちが基本的な読み書きや算数を学ぶ機会を得ていました。この時代から、教育が社会的地位を向上させる手段として認識され始めました。
明治時代(1868-1912年)に入ると、日本政府は西洋の教育制度を導入し、1872年には学制を公布して近代的な教育システムの基盤を築きました。この学制のもとで、初等教育が義務化され、教育を受けることが国民の権利と義務とされました。また、この時期には中等教育、高等教育機関も設立され、学問に対する国家の支援が強化されました。
第二次世界大戦後、1947年に施行された新しい教育基本法と学校教育法は、6-3-3-4制度(6年間の小学校、3年間の中学校、3年間の高校、4年間の大学)を定め、教育機会の平等をさらに推進しました。この教育制度の下で、より多くの人々が高等教育へのアクセスを持つようになり、大学進学率が飛躍的に増加しました。
しかし、高等教育へのアクセスの拡大とともに、大学のブランド名や学歴が社会的地位や就職機会に大きな影響を及ぼすようになり、学歴社会の特徴がより顕著になりました。特に、東京大学や京都大学などの旧帝国大学や有名私立大学の卒業生が、政治、経済、学界などの分野で重要な地位を占めることが多いため、学歴による格差が社会問題としても指摘されるようになりました。
現代では、学歴が個人の能力や適性を完全に反映しているわけではないという認識が広がりつつあり、学歴以外のスキルや経験が重視される動きも見られますが、依然として多くの場面で学歴が重要な判断基準となっています。日本の学歴社会の歴史は、教育制度の変遷とともに発展してきたことがわかりますが、将来に向けてその影響と課題についてさらなる議論が必要です。
学歴社会の問題点
現代日本における学歴社会の問題点は多岐にわたり、教育の機会不平等、社会的なプレッシャー、そして個人の能力や適性の見過ごしといった点に集約されます。これらの問題は、個人の生活だけでなく、社会全体の発展にも影響を及ぼしています。
教育の機会不平等
経済格差による教育の機会不平等は、学歴社会の根本的な問題の一つです。経済的に恵まれた家庭の子どもたちは、高額な塾や予備校、私立学校などの教育サービスを利用することができ、それが高い学歴を得るための有利なスタートラインとなっています。一方で、経済的な理由でこれらのサービスを利用できない子どもたちは、同じスタートラインに立つことができず、学歴による社会的な格差が生まれています。
社会的プレッシャーとストレス
学歴を重視する社会では、子どもたちやその家族に対するプレッシャーが大きくなります。特に受験期においては、子どもたちが過度なストレスを感じることが多く、これが精神的な健康問題を引き起こす原因となることもあります。また、学歴を基準にした人間評価が、子どもたちの自己肯定感の低下や、失敗への過度な恐れを生むこともあります。
個人の能力や適性の見過ごし
学歴社会では、学歴が人の能力や価値の主要な尺度となりがちです。これにより、学歴以外の能力や個性、創造性といった要素が過小評価されがちになります。特に職業選択や昇進において、学歴以外の経験やスキルが十分に評価されないことがあり、個人のポテンシャルを最大限に活かす機会が失われることがあります。
社会全体の発展への影響
これらの問題は、個人の不満やストレスだけでなく、社会全体の発展にも影響を与えます。多様な才能や能力が十分に活用されないことは、イノベーションの減少や産業の停滞を招く可能性があります。また、教育の機会不平等は社会的な格差を固定化し、社会の持続可能な成長を阻害する要因となり得ます。
このような問題に対処するためには、学歴以外の多様な能力や経験を評価する社会的な風潮の変化、教育の機会均等を図るための政策の導入、そして子どもたち一人一人の個性や能力を育む教育環境の整備が求められています。
学歴社会のメリット
ここまで学歴社会の問題点を見てきましたが、メリットも実はいくつかあります。メリットも見ていきましょう。
教育の質の向上
学歴を重視する社会では、優れた教育機関への進学を目指す動機付けが強くなります。これにより、学生、保護者、教育機関のいずれもが教育の質の向上に注力することになり、結果として教育レベル全体が向上します。競争が激しい環境は、教育機関間の競争を促し、教育サービスの向上やイノベーションを促進する可能性があります。
個人の努力への報酬
学歴社会では、個人の努力や成果が学歴という形で報酬される傾向にあります。勉強は他の分野よりも努力に対するリターンが大きいのです。これにより、学生に対して努力する意欲を与え、目標達成に向けて前向きな姿勢を育むことができます。高い学歴が社会的な地位や良い職業につながるという見通しは、若い世代に対して強いモチベーションを提供します。
専門職の育成
医者や弁護士になるためには、高度な専門知識を習得し、国家試験に合格する必要があります。学歴社会においては、これらの専門職を目指す学生が優れた教育機関で学び、必要な資格を取得するための明確な道筋が存在します。競争が激しい環境は、学生に対して高いモチベーションを与え、学問への深い理解と専門性の習得を促します。日本には、医学部や法学部など、専門職を目指すための高度な教育を提供する多数の大学があります。これらの教育機関は、専門分野における最新の知識や技術を教えるための専門的なカリキュラムを持っており、学生が専門職として必要なスキルを身につけるための環境を提供します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。日本の学歴社会には賛否両論もあり、一概にどちらが良いとは言えないのがまた難しい問題です。学歴社会は学生や社会人の能力の一定水準の担保という意味では機能しますが、それ以上でも以下でもなくその他の能力に関しては見過ごされがちです。それなのに今の日本の学歴社会は一部分の能力である学歴に執着しすぎているような気もします。今後は勉強だけではなく、様々な分野に興味を持ち、いろんな能力を身に着けていくことが必要となっていきそうです。
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