皆さん、蘆屋道満(あしやどうまん)という名前を聞いたことございますでしょうか?蘆屋道満はあの伝説的な陰陽師である安部晴明のライバルとして有名な陰陽師です。安部晴明は官職についた正義の味方という見方をされることが多いですが、一方陰陽師でありながら官職ではない蘆屋道満は悪役的な見方がされることが多く、まさしく対照的なライバル関係でした。
二人は最後は死闘を繰り広げ安部晴明の勝利に終わるのですが、そこに至るまで一体何があったのでしょうか。今回はそんな安部晴明のライバル蘆屋道満について紹介していきます。
蘆屋道満とは
まず最初に蘆屋道満の出生について見ていきましょう。
蘆屋道満は、播国磨岸村(現在の加川市西神吉町岸)で生まれました。幼名は奇童丸といい、智徳法師のもとで修行を積み、「道満」と一日のようになり彼は深夜に式神を召喚し、生誕地である道満屋敷から湯溝沿いを通って天下原(現在の加川市東神吉町天下原)を経由し、現在の平荘湖がある升田山古墳の石室で勉強と修行に励んだと言われています。
道満が京都に滞在している間、彼の屋敷の井戸に閉じ込められていた式神が毎晩脱出し、火の玉に変身して彼の修業地までも通っていたという逸話もあります。ある地蔵に体当たって負け、村人が直しても朝になると再び傾いていることから、「こけ地蔵」「道満の一つ火」として地元で知られるようになりました。
安部晴明と蘆屋道満の違い
安部晴明と蘆屋道満は、共に陰陽師として名を馳せた人物ですが、彼らの立場と背景には大きな違いがあります。
役職の違い: 官職と非官職
安部晴明は『陰陽寮』に所属する陰陽師であり、官職として公式に任命された陰陽師です。特に暦の作成や方位の決定、災害の予防などをしていました。晴明はその担当の中で高い地位を確立し、朝廷から正式に認められた陰陽師として活動していました。
一方は蘆屋道満は官職ではなく、一般人や僧侶などの秘密で、隠れて陰陽師の仕事を行っていた人物の一人です。法師陰陽師は官人陰陽師とは異なり、困難な制度の外で活動しており、正式な認可を受けていない「非公式」の存在でした。
このような官職かどうかという違いで安部晴明が正義の味方、蘆屋道満は悪役という構図が誕生してしまったのです。
魔除けの呪符の違い: 五芒星の清明桔梗と九字
役職だけではなく、陰陽師として魔除けの際に使っていた呪符にも違いがありました。安部晴明は五芒星のような形とした清明桔梗を、蘆屋道満は縦に4本横に5本がクロスしたような九字という呪符を用いていました。
蘆屋道満は安部晴明との占い対決
対照的な要素を持っていてライバル関係である蘆屋道満と安部晴明の占い対決のエピソードが『簠簋抄』にあります。
京都へやってきた蘆屋道満は名高い陰陽師である安部晴明に占いで敗けた方が勝った方に弟子入りするという挑戦を持ちかけました。占いの場には帝も興味を持ち臨席しました。帝は二人には見えないように箱に16個の大柑子を入れ二人の前に箱を置きました。帝は「箱の中身を見ずに大柑子がいくつ入っているのか占え」というお題を与えました。
道満は速やかに中身を「大柑子が16匹」と予測しましたが、晴明は加持を実施した後、冷静に「ネズミが16匹」と回答しました。観衆を務めた大臣や公卿たちは帝が箱に大柑子を16個入れる様子を見ていたため安部晴明が外したと落胆していました。しかし箱を開けるとその中から16匹のネズミが出てきたのです。予想外の結果の会場には驚愕しました。こうして安部晴明が勝利し、蘆屋道満は晴明の弟子となったのです。
蘆屋道満がお題を与えられて即座に見抜いたことも凄かったですが、それを聞いたうえで箱の中身をネズミに変えた安部晴明の機転の良さには脱帽するしかありません。
安部晴明と蘆屋道満の死闘
安部晴明と蘆屋道満は最終的に死闘を繰り広げることになりましたが、死闘へ至るまでの経緯を紹介します。
昔々、藤原道長という権力ある貴族が、祈りと敬虔な心を持って法隆寺を建立しました。この寺への参拝には、いつも彼の側に忠実な白い犬が伴っていました。しかしある日のこと、その犬が法隆寺の門前で異常な振る舞いを見せ始めたのです。
犬の振る舞いは異常でまるで何かを警告するかのように、吠え立て門を塞ぐように立ちはだかりました。道長が近づこうとすると、犬はさらに彼の御衣の裾を咥え、一歩も前に進ませませんでした。この奇妙な振る舞いに、道長は何か不穏なものを感じ取りました。
そこで、京の都で最も名高い陰陽師、安倍晴明を招き、この怪事の真相を探るよう依頼しました。晴明は深く祈り、占いを行った結果、門の道には邪悪な力が宿る呪物が埋められているという結論に達しました。
道長の命を受けて、その場所を掘り起こすと、そこからは素焼きの土器が十文字に束ねられて現れました。さらに詳しい調査の結果、この呪いの手口はなんと蘆屋道満のものであることが明らかになりました。蘆屋道満は時の権力者である藤原道長を呪詛しようとしたのです。
蘆屋道満の藤原道長への呪詛の罪で、安部晴明が道満討伐へ向かわせられました。二人の戦いの舞台は京都から離れた播磨国(現在の兵庫県佐用町大木谷)。そこで道満と清明は大木谷の対面する小高い東と西の丘陣取って死闘を展開し、遂に蘆屋道満は安部晴明に討たれてしまいました。
蘆屋道満は安部晴明の妻を寝取った?
そんな死闘を繰り広げた安部晴明と蘆屋道満ですが、実は恋愛でもライバル関係にあったようです。安部晴明へ弟子入りした蘆屋道満は、安部晴明の妻である梨花へ恋心を抱いてしまいました。そして安部晴明が中国へ留学している間に蘆屋道満はアプローチをして梨花と関係を持ってしまいました。しかし安部晴明が中国から帰国してしまうとその不義理な関係も終わってしまいます。
なんとか梨花を我が物にしたい。そこで蘆屋道満はある作戦を思いつきます。ある日蘆屋道満は酔っぱらっている安部晴明を見つけ賭け事を挑みます。賭けるものはまさかの首。酔っぱらっている安部晴明はあっさり承諾してしまい、あらかじめ蘆屋道満が勝つように仕込まれている賭けで負けてしまいました。そして約束通り斬首されてしまい、蘆屋道満は望み通り梨花との間に邪魔者を排除することができました。
しかしここから安部晴明は師匠の力を借りてなんと生き返ります。そしてすぐさま自分を騙した蘆屋道満には復讐を果たし、元妻の梨花も裏切り者として殺してしまったようです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は安部晴明のライバルである蘆屋道満について紹介していきました。対照的な二人はライバルとして様々な逸話を残し最後は激闘を繰り広げ蘆屋道満が討たれてしまうという結末でした。まさに現代の鬼滅の刃や呪術回線のような呪術を扱う者同士の戦いが平安時代にあったというのが衝撃です。
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