石段の階段と灯篭の美しい光景が有名な貴船神社。他の京都の有名な神社とは異なり、京都の山奥に位置し、古くから水の神を祀る神社として信仰を集めてきました。運気向上や商売向上、縁結びのご利益で有名で、多くの参拝者が訪れます。
そんな貴船神社ですが、実は絵馬の発祥地なことご存じでしょうか?また呪いで有名な丑の刻参りの発祥地でもあるのです。今回は意外と知らない貴船神社について紹介していきます。
貴船神社の概要
貴船神社は、全国に約500社を有する貴船神社の総本宮であり、京都でも屈指の歴史を誇る神社です。天武天皇の時代である白鳳6年(677年)にはすでに社殿が建立されていたと伝えられています。この神社は、清流で知られる貴船川が鴨川の源流をなすことから、京都の水源を守護する神社として、歴代の朝廷からも深い信仰を集めてきました。貴船神社は、御所の真北に位置することからも特別な意味を持ち、京都の水と氣を司る重要な地とされています。
貴船神社の代表的なご利益として、「運氣の向上」「縁結び」「諸願成就」があります。主祭神であるタカオカミノカミとクラオカミノカミは、共に雨を降らせ、止める力を持つ龍神様であり、水という万物の根源を司っています。このため、地名は「きぶね」と読むものの、神社名は「きふね」と濁らずに読みます。これは、清らかな水が濁らないようにとの願いが込められているからです。
さらに「きふね」の名前には、「氣が生まれる根源の地」という意味が込められています。この場所は、神聖な氣が湧き出る場所であり、神様の氣に触れるだけで心身が癒され、元気がよみがえるといわれています。貴船神社に訪れると、清浄な空気に包まれ、自然と運氣が高まると感じられるでしょう。
貴船神社の歴史
貴船神社の創建年代は明らかではありませんが、社伝によると、神武天皇の母である玉依姫命が反正天皇の時代に黄色い船に乗って淀川、鴨川、そして貴船川を遡り、この地に上陸して水神を祀ったことが始まりとされています。社名は、この「黄船」に由来し、奥宮には玉依姫命が乗ってきた船が石となったと伝えられる「御船型石」があります。また、地名の「貴船」は、「気の生まれる根源」を意味する「気生根」に由来するともいわれています。
歴史的な記録としては、666年に社殿の造替が行われたことが記されており、796年には貴船神が藤原伊勢人の夢に現れて、鞍馬寺建立を託宣したことが『日本後紀』に記されています。さらに818年には朝廷によって貴船神社が大社に格上げされ、1140年には最高位の正一位に昇格しました。
1046年には洪水により社殿が流失しましたが、1055年に現在の本宮の地に再建され、元の鎮座地は奥宮となりました。長らく上賀茂神社の摂社とされていましたが、明治以降に独立した神社となっています。
(画像引用: VELTRA)
貴船神社の見どころ
続いて貴船神社の見どころを見てきましょう。貴船神社へ行く予定の方は必見です。
春日灯篭
貴船神社を訪れる際、必ず立ち寄りたいのが「本宮」へと続く参道の石段です。この石段の両側には、春日灯篭が美しく並んでおり、貴船神社の中でも特に人気のフォトスポットとして知られています。まるで異世界への入り口のような神秘的な雰囲気が漂い、訪れた際にはぜひ写真に収めたくなる場所です。
日中はもちろんのこと、日没後には灯篭に明かりが灯され、幻想的な光景が広がります。日本らしい情緒あふれる風景を楽しむことができ、昼と夜、どちらの時間帯でも異なる魅力を堪能できるのがこの参道の特徴です。
(画像引用: The Gate)
本宮
貴船神社の「本宮」は、運気隆昌のご利益で知られています。特に、高龗神(たかおかみのかみ)が祀られており、この神様は水の供給を司ることから、水に関連する事業や商売に従事する人々にとって重要な参拝先となっています。運気隆昌とは、会社や事業の勢いが大きく発展することを意味し、多くの参拝者がそのご利益を求めて訪れます。
「本宮」は元々奥宮にあったものが、洪水によって損壊したため、1055年に現在の場所に移されました。その後も何度か社殿の造替が行われ、現在の建物は2007年に基礎から新たに建て替えられたものです。歴史を感じさせるその荘厳な佇まいには圧倒され、参拝者の心に深い印象を残します。自然に囲まれた静かな環境の中で、背筋が伸びるような神聖な雰囲気を感じることができるでしょう。
(画像引用: GoodLuckTrip)
水占みくじ
貴船神社の「本宮」で体験できる水占みくじ(みずうらみくじ)は、ぜひ試してみたい人気の占いです。最初に引く紙は一見真っ白ですが、これを「水占齋庭(みずうらゆにわ)」と呼ばれる神聖な泉に浮かべると、文字が浮かび上がり、吉凶を占うことができます。この特別なおみくじは、貴船神社ならではの神聖な水を利用しており、非常に当たると評判です。
水は貴船神社にとって重要なご利益をもたらす存在であり、この水占みくじもその象徴とも言えます。神社参拝の際には欠かせないおみくじですが、貴船神社の水占みくじは特に神秘的で、訪れる人々に大きな魅力を与えています。
(画像引用: るるぶ&more。)
奥宮
貴船神社の「奥宮」は、山深い場所に佇み、その神秘的な雰囲気が一層際立っています。川のせせらぎや風に揺れる木々の音が心地よく、訪れるだけで心が洗われるような癒しの空間です。「奥宮」には、高龗神(たかおかみのかみ)が祀られており、諸願成就のご利益があるとされています。特に、縁切りの祈願が叶う場所としても知られ、多くの参拝者が訪れます。
「奥宮」は貴船神社の創建の地であり、神武天皇の母・玉依姫命が「淀川」や「貴船川」を遡り、この地に到着したと伝えられています。玉依姫命が乗っていたとされる「黄船」は、現在も「本殿」のそばに祀られており、その歴史と伝説に触れることができます。また、「本殿」の真下には、日本三大龍穴の一つとされる「龍穴」が存在し、さらに神秘的な魅力を感じさせる場所です。
(画像引用: 九州神社旅行)
結社
貴船神社の「結社(ゆいのやしろ)」は、縁結びのご利益で人気を集めるスポットです。ここに祀られているのは磐長姫命(いわながひめのみこと)で、縁結びに特化した神様として多くの参拝者が訪れます。「結社」は、平安時代の歌人・和泉式部が夫の心変わりに悩んで参拝し、心を込めて歌を捧げた結果、その願いが叶ったことから「恋の宮」とも呼ばれるようになりました。
結社は木々に囲まれた静かな場所にあり、並んだ灯篭とすっきりとした美しい佇まいが特徴です。自然の音だけが響く静寂な空間は、訪れる人々に心の安らぎを与え、恋愛や良縁を願う方々にとって特別な場所となっています。
(画像引用: Inishie Japan)
貴船神社のアクセス
貴船口までのアクセス
貴船神社へは、最寄り駅である貴船口駅まで行き、そこから徒歩またはバスでアクセスします。車で神社近くまで行く場合、駐車場がないため、貴船口駅までのアクセスがおすすめです。
電車で京都駅から行く場合、以下のルートがあります:
- ルート①
京都駅 →(京都市営バス4号系統・約25分)→ 出町柳駅 →(叡山電鉄・約28分)→ 貴船口駅 - ルート②
京都駅 →(JR奈良線・約3分)→ 東福寺駅 →(京阪本線・約15分)→ 出町柳駅 →(叡山電鉄・約28分)→ 貴船口駅
バスで京都駅から行く場合のルート:
- ルート①
京都駅 →(徒歩3分)→ 京都駅前バス停 →(京都市営バス5号系統・約1時間)→ 岩倉操車場前バス停 →(京都バス52号系統・約18分)→ 貴船口バス停 - ルート②
京都駅 →(徒歩3分)→ 京都駅前バス停 →(京都市営バス4号または17号系統・約25~28分)→ 出町柳前駅バス停 →(京都バス32号系統・約40分)→ 貴船口バス停
いずれのルートでも所要時間は約60~90分、費用は片道1000円前後です。
貴船口からのアクセス
貴船口から貴船神社まではバスまたは徒歩でアクセスします。
- バス
貴船口駅 →(京都バス33号系統・約4分)→ 貴船バス停
料金は片道約220円ですが、バスは混雑することがあります。 - 徒歩
徒歩の場合、貴船口から貴船神社までは約30分かかります。山道を登るため、体力が必要ですが、美しい自然を楽しみながらの散策がおすすめです。
貴船神社の豆知識
最後に貴船神社の豆知識を見ていきましょう。由緒正しい神社であるからこそ様々な豆知識や憶測があります。それでは見ていきましょう。
貴船神社は絵馬発祥の地
貴船神社は、絵馬の発祥地として知られています。かつて、日照りの際には「雨雲を表す黒い馬」、長雨が続くときには「晴天を願う白馬や赤馬」を神社に献じ、雨乞いや雨止みの祈願をしていました。当時は生きた馬を奉納することが一般的でしたが、時にはその代わりとして、馬の形をした板に色を塗った「板立馬(いたてうま)」を奉納することもありました。この「板立馬」が、現在の絵馬の起源となっています。
(画像引用: 千代田区観光協会)
貴船神社は丑の刻参りの発祥の地
貴船神社は、丑の刻参りの発祥地として知られています。丑の刻参りとは、憎い相手に見立てた藁人形を神木に釘で打ち付け、呪う儀式ですが、本来の貴船神社の信仰は異なります。本来の信仰では、貴船明神が降臨したとされる「丑の年、丑の月、丑の日、丑の刻」に参拝すると、心願成就が叶うと信じられていました。呪いを目的としたものではなかったのです。
また、貴船神社には「宇治の橋姫」の伝説も伝わっています。平安時代、都のある女が妬む相手に対する復讐心から鬼女になることを望み、貴船神社で願をかけました。その結果、女は神託に従い、姿を変えて三七日間、宇治川に浸かると鬼女になりました。この女は、鬼女「橋姫」となり、復讐を果たした後、誰彼かまわず人を襲い続けました。
年月が経ち、ある晩、源氏の武将・渡辺綱が一条戻橋で橋姫と遭遇します。橋姫は綱に送ってほしいと頼み、綱がそれを引き受けると、橋姫は鬼女の姿に戻り、綱を捕らえて舞い上がり、愛宕山へ連れ去ろうとしました。しかし、綱は持っていた源氏伝来の「髭切の太刀」で鬼女の腕を斬り落とし、退けたと伝えられています。
(画像引用: 砂村隠亡丸の余苦在話)
「きぶね」ではなく「きふね」の理由
貴船の地名は本来「きぶね」と読み、電車の駅名も「貴船口(きぶねぐち)」と表記されていますが、貴船神社に関しては「きふね」と濁らずに発音します。これは、神社が祀る貴船明神様が水の供給を司る神であり、その清らかな水がいつまでも濁らないようにとの願いが込められているためです。神域には絶えず美しい水が湧き出ており、その水の清浄さを称え、神社名は「きふねじんじゃ」と濁らない読み方が用いられています。
(画像引用: とりあえず)
貴船神社は行かない方がいい?
貴船神社は、日本有数のパワースポットとして知られ、その強力なエネルギーが多くの人に影響を与える場所です。そのため、調べると「行かない方がいい」という意見に出会うことがあります。この理由の一つには、貴船神社が丑の刻参りや絵馬の発祥地であり、特に強い力を持つ場所とされているからです。
特に奥宮の本殿の真下には、日本三大龍穴の一つとされる強力なエネルギーが集まる場所があり、この力が人によっては強すぎると感じられることもあります。貴船神社は運気向上のご利益で知られていますが、パワーを敏感に感じやすい人や、神社やお寺に行くと体調を崩しやすい人には、注意が必要かもしれません。そのため、エネルギーに敏感な方は訪れる際に慎重に考えることが推奨されることがあります。
(画像引用: Sakak‘s Gadget Blog)
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回貴船神社の歴史や見どころ、豆知識を紹介してきました。
貴船神社は、京都の自然豊かな地に位置し、歴史的にも霊的にも重要な存在です。運気向上や縁結びといったご利益を求める多くの参拝者が訪れる一方で、日本三大龍穴を有する奥宮や絵馬の発祥地としての背景も持ち、強力なエネルギーを感じるパワースポットとしても知られています。神秘的な雰囲気や豊かな自然に包まれた貴船神社は、訪れる人々に深い癒しと新たな活力を与えてくれる場所です。
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