枯山水(かれさんすい)という庭園形式をご存じでしょうか。日本庭園の中でもかなり芸術性の高い設計様式でその美しさに日本だけでなく世界中から観光客が来ています。今回はそんな世界中の人々を魅了している枯山水について紹介していきます。
枯山水とはどんな意味
枯山水とは水を一切含まず白い砂と石、植物、地形を利用して水の流れを表現した日本庭園の一形態を指しています。これは日本の庭園形式の中でも最も古いタイプの一つで、禅宗と侘び寂び、そして死後の世界と現世を繋ぐ庭園として表現されていました。水を使わず白砂で水の流れを表現することは質素で静けさを重んじる禅宗や侘び寂びの精神が反映されています。死後の世界と現世をつなぐ役割は庭園の岩が果たしています。
例えば西芳寺や龍安寺のような有名な枯山水で設計されている庭園は、背後の山に古墳があり、その墳墓の石碑が石組みに使用されています。枯山水の庭園で心を無にして禅や瞑想を行えば極楽浄土に行けるという風に考えられていたのです。
枯山水の歴史
枯山水の歴史は古代の巨石信仰にまで遡ります。鎌倉時代には禅宗が日本に導入され、禅寺の庭園に石組みが建てられ、そして室町時代になり侘び寂びの精神が結び付き完成します。
枯山水の歴史は、日本の古代からの巨岩信仰から始まっています。この信仰は、古来から日本人は自然の石に霊的な価値を見出し、それを崇拝する宗教的な慣習があったのです。その最たる例が古墳です。しかし庭園に古墳のような巨大な岩を設置することはできません。そこで石を使うことになったのです。
枯山水が本格的にスタイルを確立し始めたのは鎌倉時代(12世紀-14世紀)に入ってからです。この時代には禅宗が日本に導入されました。禅宗とは一切の邪念を取り払って心を無にすることで悟りを開くことができるという教えでした。枯山水の庭園はそうした禅宗の修業をする場として最適だったのです。このように枯山水庭園は、禅寺の庭として特に人気を博し、認知度が広がっていきました。しかしこの時代までは庭園の一部を枯山水にするといった形式でした。
庭園全体を枯山水にするという流れが日本に広まったのは室町時代です。この時代に応仁の乱という大乱戦が起こりました。京都はこの応仁の乱によって荒廃してしまいました。人々は労力とお金をかけずに美しい庭園を復興させたいと考え、水がなくとも手軽に作ることができる枯山水が注目されたのです。この時代の枯山水は庭園の敷地全体を枯山水の形式で表現していました。水の流れは白砂で表現するようにしていきました。またこの白砂による水の流れの表現は質素と静寂、清らかで澄み渡った侘び寂びの美意識も込められています。
枯山水の有名な庭園
次は枯山水の有名な庭園を見ていきましょう。ここでは2つ紹介します。
龍安寺(りょうあんじ)の石庭
京都にある龍安寺の石庭は、世界で最も有名な枯山水庭園の一つです。15世紀に作られたこの庭園は、15個の石を使って5つの群島を表現しており、どの角度から見てもすべての石が見えることはありません。この庭園は、無限の宇宙や生命の永続性を象徴していると考えられています。
大徳寺(だいとうじ)の方丈庭園
(画像引用元: https://oniwa.garden/nanzenji-temple-hojo-%E5%8D%97%E7%A6%85%E5%AF%BA/)
京都の大徳寺にある方丈庭園も、日本の枯山水庭園の中で特に有名です。ここには、数多くの亜庭園があり、それぞれが独自のテーマと美的感覚を持っています。特に有名なのは、国宝である方丈の南庭「龍吟庭(りょうぎんてい)」で、極めて洗練された美しさを誇ります。
枯山水は、日本文化の中でも特に精神性と芸術性を重視する部分を象徴しており、その静謐な美しさは多くの人々に感銘を与え続けています。
枯山水の作り方
続いて枯山水を構成する重要な要素を紹介します。
石
枯山水の最も重要な要素です。石は山や島、滝など自然の風景を象徴的に表現します。形や大きさ、色、質感の異なる石を使い分けることで、さまざまな自然の景観を表現します。
砂・礫
砂や礫は水の流れや波を象徴します。砂は細かく耕され、波や流れを模倣する模様が描かれます。これにより、水が存在しないにもかかわらず、水の動きや存在感が感じられます。
苔
苔は自然の美しさと静寂さを表現するために使われます。苔は湿度と静けさを象徴し、庭園に深みと多様性を加えます。
枯山水のボードゲームが存在する?
このように日本の歴史を彩ってきた枯山水ですが、実はボードゲームが存在していることご存じでしょうか。
このボードゲームでは、参加プレイヤーは禅僧となり、美しく洗練された枯山水庭園を造ることを目指します。
自らの庭で、禅の精神と芸術性を最もよく表したプレイヤーが勝利します。
全員の庭が完成後の点数の確認が芸術性を評価するということで少し複雑ですが、
庭の美しさを目指したり、勝利にこだわったり、様々な楽しみ方が色々できます。
ぜひ興味を持った方は遊んでみてください・
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は日本庭園でも人気の形式の一つである枯山水について歴史や有名な寺院、そしてなんとボードゲームまであることを紹介してきました。
死後の世界と現世をつなぐ役割や禅宗の教えや侘び寂びの精神が結び付き完成された枯山水は日本の様々な庭園を表現してきました。
私は「枯山水」という言葉を知らずに龍安寺の庭園を見たときは「ただ綺麗だな」と感心していましたが、枯山水の意味や歴史を知った後に再び見たときはこの庭園を造るまでの歴史や想いが頭に浮かび感動してしまいました。
皆さんは枯山水を知ることができたので、ぜひ枯山水の庭園へ足を運んでいてください!